Novels@solo/trio

サークル「solo/trio」の小説置き場です。

<C&P>【銘無しの名無し-prologue-】

「おーい。朝だぞー」

某月某日。
天下三名槍が一つ―――本人曰く刺すことしかできない―――こと、御手杵はとある部屋の前にいた。何度か中にいる人物に声を掛けるも、襖には自分の影が映っているだけで開く気配はない。
わざわざ部屋の中に声を掛けずとも、襖を開けて部屋の住人を叩き起こせば手っ取り早いのだが、何分、朝寝坊が常習であるこの部屋の住人は女性なので自然と憚られる行為だった。

「・・・入るぞー」

早々に痺れを切らしたようで、襖に手を掛け中の様子を伺うようにゆっくり開ける。
部屋の作りの関係で中は暗く少し狭い。襖から漏れる日光で部屋の中央にある正方形の机を視認できる。その机の向こうにひし ゃげた掛け布団と人影を確認する。
近づき肩を揺さぶると、薄らと目蓋が開き群青色の方の瞳が彼をぼーっと捉える。

『・・・んぁ?』
「嬢ちゃんもうそろそろ起きないと」

余程深い眠りだったのか、結構強く揺さぶったのだがそれでも意識が微睡んだままだ。舌足らずの眠たそうな声で会話をする。

『・・・ぎねさん、すみません。わざわざ起しに来ていただいて。あと10秒待ってください。ちゃんと意識が覚醒してないので』

・・・。



・・・・・・。



・・・・・・・・・。





『やっぱ無理です。眠い』

そういって起こしかけていた上半身を再び布団の上に投げる。ひしゃげた掛け布団を抱き寄せ、再び目を閉じようとする少女の頬を軽くペシペシと叩く。

「みんなもう飯食い始めてるんだけど」
『・・・別に僕のこと待ってなくても良いんだけどなぁ。ぎねさんも僕のことなんかほっとけばいいんですよ』
「そんな事言ってもなぁ。嬢ちゃんの世話を任されてるからそうもいかないだろ」
『律儀だなぁ』

そう言いながら渋々彼女は体を起こすなり、黒のロングコートに袖を通す。寝癖をつけたまま、おぼつかない足取りで部屋を出て行こうとしているのを御手杵が止める。

「ちょっと待て 。・・・全く」

制止するなり、鏡台から櫛を取り出し暗赤色の短髪を甲斐甲斐しく梳かす。少女は目を閉じたまま眠ったように甘んじて髪を梳かされているが、今にも眠ってしまいそうだ。少女の髪は旋毛から毛先にかけて赤から黒になっている事が分かる。
整えながら、少し呆れた風に言う。

「折角綺麗なんだからもう少し身だしなみに気を遣っほうがいいと思うんだがなぁ」
『燭台切さんみたいなこと言いますね。あと“綺麗”は余計です』

と、嫌そうに御手杵の手を退ける。
縁側に出ると手を顔の前にかざし、まぶしそうに顔をしかめる。しかしすぐに慣れたのか腕を重力に任せて下ろし御手杵の方を振り返る。
少し遠目から全身を見 るなり、また小言のように少女に言う。

「また戦支度解かないまま寝たのか?」
『別にいいじゃないですか。こうやって寝坊するんですから』

そんなことより早く行きましょう。
そう言っていたずらっ子のような笑みを浮かべた。



いつ見ても消えちまいそうだな、と御手杵は曖昧な返事をしながら思う。それは太陽光が透けて見えると錯覚するほど彼女の肌が色白だということ、そしてなにより彼女の存在の曖昧さとがあいまっての感想だった。





“何の武器の付喪神なのか”どころか、名前も出生も全く分からない。



正しく、 【正体不明】。



真実を知るは本人のみ。



しかし彼女は語らない。



ただ彼女が負う役目は一つ。


【私は凡百の苦衷背負う物

 

               そう、私は凡百の刀そのもの
  
 
                                無名の苦しみ、背負いましょう】






・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

【設定・補足】

・主人公
名前:???

性別:女 身長:160ぐらい

扱える刀剣:固執する武器無し

刀装:2つ。種類はその時扱う刀剣に依存。

容姿:薬研ぐらいのショートで左目が髪でギリギリ隠れてる。暗赤色(旋毛から毛先に向かって黒になる)。右は群青色、左は銀色(白)。見た目不健康。基本目が死んでる。色白なので目の下の隈が目立つ。
襟が立ってるロングコート(着てない時もある)、手袋、ワイシャツ(1番上のボタンは開けてる)、ウエストポーチ×2、その他ホルダー×2、ジーパン、厚底の仕込み靴。全部黒。

性格:飄々としていて他人をのらりくらり躱す。いたずら好き。2828と嫌な笑みを貼り付けているのが常。酒豪。主命にはそこそこ忠実。無気力ニヒル系狂戦士。

備考:一人称僕。敬語で皆敬称付けて呼ぶ。審神者審神者さんか貴方。自分の正体についてはあまり語らない。
生存と必殺が異常に低い。打撃と機動が高い。

・御手杵
第二部隊隊長。この本丸の古株の1人。自身も隊長歴が長いことと審神者に主人公の世話を言いつけられてるため、色々と気にかけてくれる。
主人公を拾った張本人。