Novels@solo/trio

サークル「solo/trio」の小説置き場です。

<もちゃも>【あんスタ】虚箱だけど。Part3【CoCリプレイ】

f:id:suzuki0424momomo1002:20170703112032p:image

 http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29694122

Part2投稿後、冒頭の説明とOPを入れ忘れたことに気付いたうp主は1D10/1D100のSANチェックです。
コロコロコロ→ファンブル!!

大変お待たせいたしました。虚箱だけど。セッションパート完結となります。
いやぁ思った以上にSAN値回復に時間gごめんなさいサボってました。
おかげさまで真夏の夜の夢の瀬名泉カンストできましたありがとうございます。
コメ返し、補足等は反省会(予定)にていたします。

 

投稿したもの→http://sp.nicovideo.jp/mylist/55485143
前回→http://sp.nicovideo.jp/watch/sm28711215

次回→明日から頑張ります!


何かあればこちらまでお願いします。→http://twitter.com/aop_motya_game

<もちゃも>【あんスタ】虚箱だけど。Part2【CoCリプレイ】

f:id:suzuki0424momomo1002:20170703111753p:image

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm28711215

推理が失踪してます。注意。

お待たせいたしました。Part2になります。
今回はKPが盛大にやらかしてます。
みなさんの温かく広い心で許してください。

 

投稿したもの→http://sp.nicovideo.jp/mylist/55485143
前回→http://www.nicovideo.jp/watch/sm28601197

次回→http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29694122


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<もちゃも>【あんスタ】虚箱だけど。Part1【CoCリプレイ】

f:id:suzuki0424momomo1002:20170703111555p:image

 

http://www.nicovideo.jp/watch/sm28601197
ついにやってしまった。

実卓リプレイ動画です。
初めて動画作ったので音量手探りで設定しました。注意してください。

シナリオはマリコロ様の「虚箱」をお借りしました!
http://maricoro.chobi.net/index.html

 

投稿したもの→http://sp.nicovideo.jp/mylist/55485143

次回→http://sp.nicovideo.jp/watch/sm28711215


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<C&P>【銘無しの名無し:内番2/2】

正確な時刻は分からない。空の色を見る限り、もうそろそろ夕暮れ時が近い。薄い鱗雲が山の方へゆっくりと流れ、空の水色は今にも色を失って透けてしまいそうだ。

今していることと言えば、一仕事終えて暫く源氏の2人と談笑をしていた。
…まぁ、談笑ということにしておく。というのも。

「…―――群青ちゃんはなんでもできちゃうんだね」
『いや。そんなことはありませんよ。さっきの髭切さんの説明が良かったからです』
「………」

そう。会話してくれることはしてくれるのだが、彼の弟ーーー膝丸には険呑な視線を向けられていた。僕自身、そういうのには慣れているし、思い当たる節もある。とはいえ、この二極端な雰囲気に挟まれているこの状況は中々に疲れる。
髭切さんはというと、気付いているのかなんなのか、特に反応を示さない。どこか面白がっている風でもあるが。

『…そう思いません?』
「…あぁ、そうだな」

と、まぁ。こんな調子だ。
ついつい苦笑いを零してしまう。ここまで露骨だったら誰でも笑ってしまいたくなるだろう。

「…なんだ?ニヤニヤして」
『いや…。なんでもありませんよ?』

それと。
悪気はないのだろうが、僕の顔を凝視するのをやめていただきたい。それはそうと、お暇しようと口を開きかけたところで意外な人物がこちらに向かっているのが目に入る。

「お嬢こんなとこにいたか。稽古場にも部屋にもいねぇから探しちまった」
『あら?僕に何か御用ですか?』
「用っちゃぁ…、用だな」

玄関の方から真っ直ぐやってきたのは、内番服姿の田貫さんだった。妙に歯切れの悪い感じで声をかけてくる。
これは珍しいと源氏の2人も黙っている。
何も言わないで首を傾げていると、正方形の白い封筒を目の前でヒラヒラのさせる。微かに、何か硬いものがぶつかり合う音が聞こえるがこれは?

「………遠征の、土産だ」

確かに、短く、彼はそう言って封筒を突き出した。
意図が読めないまま言葉と封筒を受け取ったところで、やっと返事をする。

『あ、ありがとう、ございます…?』

どういう風の吹き回しだろうか。
少しバツが悪そうに頭を掻きながら背を向けている田貫さんをよそに、私は封を開けて中身を覗いた。

あぁ。これは…。

『…金平糖、ですね。ありがとうございます』

封を閉じ、田貫さんの背中に向かって軽く一礼する。田貫さんはやっぱり歯切れ悪く「礼を言うなら御手杵に言え」と言った。そしてどこか誤魔化すように手合わせしろ、と重ねてくるのものだから笑ってしまう。
そそくさと立ち去ろうとする彼の背中をぼんやり眺めながら、髭さんにお礼を言う。

『今日はありがとうございました。また縁があればよろしくお願いします』
「そんなに畏まらなくてもいいよ。またね。群青ちゃん」

暖かく微笑む彼にもう一度頭を下げてから彼らに背を向ける。そして、自分の背中に突き刺さる視線を無視して走り出した。


*****

『あの、ぎねさんお土産ありがとうございました』
「あー…あれな。気にすんな。確かに買ったのは俺だが、そもそも、同田貫から提案してきたんだぜ?」
『え…。またなんで?』

夕食の食器を片付けながらそんな話をする。
少し…いや、かなり驚いたので敬語が取れてしまう。特に気にする風でもなく話は続く。

「さぁなー。俺にはさっぱりだ。まぁでも…あんたに対して思うところがあるんだろうよ」

それは、どういう事だろうか。彼とは何もかも違うというのに。ただ単に、目を掛けて貰っているという話かもしれないけれど、どこか含みのあるぎねさんの言葉に引っ掛かりを覚えた。
………まぁ、然程重要ではないだろう。わからなかったというだけで死ぬ訳では無い。後悔することはあっても終わることは無い。そう、後悔がこの身を焼こうと終われない。

「まぁ、嬢ちゃんはまだ馴染めてない様なところあるから、心配だったんだろうよ」
『…。大丈夫ですよ。心配していただかなくても』

ほっといて欲しい。目を掛けてくれてるのは確かにありがたいけど、私はそれには応えられない。ただ、重いだけだ。だから、心配も配慮も要らない。これまでも、これからも、期待に応えることなんてないんだから。

『…わっ、な、なっ、なんですかっ!』
「全く。考えすぎだ」

ワシャワシャと髪を乱暴に掻き回すとそれだけ言って、台所に入っていく。手櫛をかけて自分も後に続くと中には燭台切さんと……。白い人と肌が褐色の、えっと、あれ?なんだっけ。

「いつもお手伝いありがとうね」
『い、いえ。いつも美味しいご飯ありがとうございます』

考え事の最中に燭台切さんか僕の持ってる食器を受け取りに来る。少したじろいでしまったが、彼は気にしていない様子。彼は食器を受け取ると自分の髪の毛を指さして「はねてるよ?女の子なんだから身なりには気をつけないと」とにっこり笑った。

『…これはぎねさんのせいです。不可抗力です』
「御手杵さん、彼女になにかしたの?」
「いや、ただ難しい顔をしてたからちょっと茶化しただけだよ」
『僕難しいことなんか考えてない…です』
「まぁ、ムキになるなよ」

ここでため息を一つ。

 

はぁーーーー。

 

ほんと。まったく。
ぎねさんは話しやすいのはいいのだけれど何故か調子が狂う。普段はみんなにからかわれているのに、僕と話す時は逆にからかってくる。ある意味、めんどうだ。

「ははっ。お嬢と御手杵は本当に仲がいいんだな」
『…ぎねさんが勝手に絡んでくるだけです。というか、審神者さんの命令に忠実過ぎです。面倒なら放っておけばいい』
「おいおい。それは言い過ぎじゃないか?まるで言ってることが伽羅坊………悪かったからそんなに睨むなよ」

それはともかく、と白い人。

「御手杵は好きでやってるんだろ?」
「あ?あぁ。まぁな」
『………はぁ。まぁ、好きにしてください。とにかく、お手伝いしますよ燭台切さん』

応対するのが面倒くさくなったので、強引にはなしを切り替える。
皿洗いを手伝おうと腕を捲ると白い人が、俺が今日は手伝うからお嬢は休んでていい、という。なんか癪だったが、突っ込まれるのが目に見えているので大人しく引き下がることにした。

『ありがとうございます。えーっと』
「………鶴さん…。鶴丸だよ。お嬢さん」

苦笑いを零しながらそう教えてくれる。そうだそうだ。思い出した。この白い人は鶴丸国永さん。イタズラ好きの人だったか。ちょっと記憶が曖昧だ。
名前を思い出した、もとい教えてもらったので改めてお礼を言おうと口を開いた。

『あ、はい。フォローありがとうございます燭台切さん。…改めてありがとうございます鶴丸さん』
「おい、まだ俺の名前覚えてなかったのか!?」

こりゃ驚きだ。と金色の瞳を見開いて呆れたように頭をおさえた。

 

 


********

・群青ちゃん
 髭切が主人公を呼ぶときの固有名詞。右目が群青色であることからきている。一部太刀の間で定着する。

・膝丸
 源氏の刀。あやかしを切ったとされる刀。兄の髭切を心から慕う。主人公の存在を危険視している節がある。

金平糖
 甘いお菓子。瓶に入っていたりするときれい。

・燭台切光忠
 伊達の刀。本丸のおかん。食事は基本彼に丸投げである。本丸の古株で主人公のことを気に掛けてくれている。

・大倶利伽羅
 今回、一言も話してない。彼も道場の常連なのでよく顔を合わせるのだが話すかと言ったら話は別。

鶴丸国永
 びっくりじじい。何度か主人公にどっきりを仕掛けているが、そんなに効果が無い。そのせいかなんなのか、名前を覚えられていない。

<C&P>【銘無しの名無し:内番1/2】

「今日はお休みだ」
『・・・はい?』

一瞬、何を言われたのか分からず聞き返す。
いつも通り、朝食の時間に遅れてきた僕。珍しくぎねさんもたぬきさんも食べ終った後に起しに来たので、大広間には僕と何人かしかいない。そこに、審神者さんがやってきた次第なのだが。

「今日は出陣は無し。その代わりと言っては何だけど内番を割り当てるから」
『えぇ・・・?僕は別に田貫さんたちと一緒じゃなくても大丈夫ですし…。どうせだったら』

何もしたくないです。

・・・なんて、口が裂けても言わないが。
審神者さんはどこか勘違いしているようで、遮るように言葉を続けた。

「いいのいいの。大体、御手杵たちはもう遠征に出てるから。今日は本丸で内番しながらゆっくりして、な?」
『・・・審神者さんが、そういうなら従いますけど』

不承不承頷いた風になったが、彼が言うとおり今日はのんびりと内番をやって過ごそう。
というか、そうせざる終えない。

「ああ、今日は髭切と馬当番だから彼のことよろしくね」
『あ、え。はい。分かりました』

・・・困ったことになった。


* * * * * *


困ったことになった。

というのも、その“髭切”の顔が思い出せないのだ。審神者さんがさらっと名前を出したところをみると、どうやら初対面ではないようだが。当てにはならないか。
・・・どうにもこの体には対人記憶能力に著しい欠如があるようだ。

内番服に着替え部屋を出、悶々としながら 馬屋へと歩みを進めているるとなにやら馬以外に誰かがいることに気づいた。ここからではよく見えないが白いジャケットかなにかを羽織っているようだ。その影は一瞬、動きを止めたと思ったら馬屋の中を移動している。
すると、その影の主はひょっこり顔を出してあたりを見渡し、こちらに気付いたのか僕を見てにっこり笑って手招きをした。

『・・・?』

「   」

思わず自分もあたりをキョロキョロしてしまう。適当にあたりを見回したところで、正面に向き直ると彼の唇が動いているのに気づいた。どうやら“君だよ”と言っているようだ。
呼ばれているらしいことを察した僕は小走りで彼に駆け寄る。

『えっと。髭切さん、ですよね・・・?』

明らかに覚えてないこと丸出しで話しかけた僕をとくに気にする様子もなく和やかな雰囲気で応じてくれる。

「今はそう呼ばれているかな?まぁ、君とは殆ど初対面だから正直、名前を呼ばれるなんて思った無かったよ」
『ですよねー』

やっぱり、初対面か。どうりで何一つ思い出せないわけだ。
勝手に納得していると彼は「ちょっとお話しようか」といって近くの縁側に座るように促した。
・・・意図が読めずに言われるがままに隣に少し空けて座る。

「えーっと…君のことはなんて呼べばいいのかな?」
『・・・なんでもいいですよ。みなさん、“嬢ちゃん”とか“お嬢”とか呼んでますけど、僕としてはくずでもゴミでもいいです。個体識別できれば』
「流石に女の子とことをそんな風にはよべないなぁ」

と、 僕の自虐に少々困ったように笑う。本題ではなかったのか「まぁいいか」と考えることをやめたようだった。
なんと大雑・・・。おおらかな人だ。好感が持てる。

「今日は馬当番よろしくね」
『ええ。こちらこそ』

この人は結構マイペースらしい。
というか、この短時間で大体の性格が分かるということは余程強烈な人格をお持ちなのだろう。まぁ、この本丸の面々は正直、個性の殴り合いをしているようなところがあるからそこまで驚いているわけではないが。髭切さんもその中の一員ということだろう。

「・・・君とはちゃんとお話してみたかったんだ」

唐突にそんなことを言い出す。
意表を突かれて彼の横顔を凝視するが、穏やかな表情で空を見上げる横顔からは何も読み取ることができなかった。次の言葉を待つこと無く、驚いた勢いでどうしてですか?と言っていた。

「んー。そうだねぇ。確固たる理由はないけど、単に君に対する興味かな」
『あー。なるほど。僕しかいませんもんね女士』
「まぁ、そういうことでもあるね」

どこか含みのあるニュアンスに"何に"興味があるのかを察した。何も言わない僕に薄ら寒い笑みを向ける。ソレについてどうしても話したくない僕は、これ以上この話が続かないように内番の話題を振る。それはそれでまた含み笑いをされてしまったが。

『えーっと・・・。そういえば僕がやる事ってありますか?』
「やることならいくらでもあるよ」
『・・・良いんですか?こうして僕と話していて』
「内番は一日だし、のんびりで良いと思うけど。根詰めるようなこともないしね」
『僕、手合わせと炊事以外の内番初めてなので色々教えて欲しいです』

何が意外だったのか、そうなのかい?なんて、さっきの表情とは打って変わり、少し驚いたように目を見開いてクスリと笑う。
初対面でこうして間近で話すこと自体が初めてだからそれとなく、容姿に思考がいく。・・・どの角度から見ても整っている顔、とでも言えば良いのか。雰囲気も相まって見とれそうになる。
まぁ、惚れるなんて間違ってもできないのだろうけど。

「僕に教えられることがあればいいけど。まぁ、君とのおしゃべりは内番しながらでも出来るし、ちょっといろいろやってみようか」
『はい。よろしくお願いします』

ついさっき座ったばかりだというのに、立ち上がって馬小屋の方へと進む。
ぱっと見、空きが多い。おそらく、今出撃している部隊が連れて行ったのだろう。
白く小さい馬が二匹と、真っ黒な馬が一匹が大人しくこちらを見ている。

「まずは、慣れるところから始めようか。動物は好きかい?」
『はい。馬は乗ったことしかありませんけど』

真っ黒い馬に触れる。
拒絶されるのでは。そんなことが頭をよぎったが、別に可もなく不可もない反応だった。生物特有の温度と手触りに心地良さを感じつつ、内番のことに思いを馳せるのだった。



* * * * * *

・遠征
 資材を調達する手段。時間は掛かるが大成功すると中々にうまい。

・内番
 ステータスを運で上げられる。なかなか上がらない。

・髭切
 源氏。不思議属性強めのおじいちゃん。この本丸では比較的新人だが、腕は立つので出陣回数は多い方。主人公の正体を推測している一人。

・馬
 社会性の強い動物。まぁ、食べたり出来るけど。基本もしくは、普通乗り物。

<C&P>【銘無しの名無し:日常の断片 2/2】

「おっし!粗方片付いたな!」
「はぁ。やっと終わったぁー。正直夜目利かないから死ぬかと思ったぜ。なんで俺が夜戦に・・・」
「そりゃあ、お嬢のお目付役だからじゃねぇのか?」
「まぁ・・・」

曖昧な返事をしながら御手杵は頭を?く。

他の隊員も厚の一言を聞くと背伸びをしたり、あたりを少し散策したりと各々がリラックスしている。久々に夜戦に駆り出された俺からからしてみれば、慣れない戦闘の連続にいつもより疲労が溜っていた。
なんとなく思ったことを口にしてみる。

「にしても、夜戦の短刀は恐ろしいな」
「ん?まぁ、夜戦は間合いを詰めやすいからな。上手く立ち回り易いんだよ。・・・それはそうと、お嬢が見当たらないな」

厚はキョロキョロとまわりを見渡す。それにつられるように隣にいる俺もあたりを見回すが、それらしい影は見当たらない。

・・・なんとなく、落ち着かない。
彼女が一人で消えそうになっているのではないか、そう考えるとなんとも言えない焦燥感に駆られる。追い立てられるように、橋の方へ戻る。

「・・・」

橋の中腹、人影を見つける。黒い服のせいか体の闇との境目が曖昧になっている。捲っている袖から見える妙に白い腕が辛うじて彼女を闇から切り離している。

ふと、何かが横切る。
目で追うとそれは赤く発光しているように見える。発光、とは言っても闇の中で紋様がはっきり見えるというだけで、あたりを照らしている訳ではない。そしてそれは、不規則に中を舞っている。

・・・蝶?

不規則な動きで体に触れそうに なる蝶をよろよろとみっともない動きで避ける。そのうちに赤い蝶は橋の方へ橋の方へとよろめいて飛んでいく。視線を移すと、彼女の周りには沢山の蝶が舞っていた。彼女に集まっているようにもみえる。
幻想的と言えば、幻想的ではあるがいささか気味が悪い。

「おい。嬢ちゃん…?」

彼女が振り返るその刹那、辺りの蝶は煙が立ち上るように宙に消える。

『…あぁ。どうしたんですか?』

何事もなかったかのようにしっとりとした笑みを浮かべるその顔にはベッタリと血がついている。肌が白いせいか血の赤が目立ち、月明かりのせいで彼女の笑みは一層不気味に見える。
なにか面白いものを見るようにクスクスと肩を揺らし、 続けて夜空を仰ぐ。

『幽霊でも見たような顔をしてますよ?ひどいなぁ。僕は幽霊じゃないですよ。…にしても、綺麗な満月ですねぇ。この月に血濡れの赤は映えませんかね。どう思います?』

意見を求めている割には興味無さ気にシャツの裾で顔の血を拭う。服が黒いから分かりにくいが、よく見ると顔だけでなく全身に血が付いているようで布が更に黒く、加えて濡れて肌にくっついている時の独特の不自然な皺がついている。

『・・・本当に大丈夫ですか?お疲れですね。・・・それともなんです?僕のことが怖いんですか?』
「い、いや」
『そうですか?ともかく、多分本丸に帰ったら夜中でしょうし、厚君に言って早く帰って休みましょう』

ヘラヘラと自虐的に笑いながらそういう彼女は元気そのものだった。手を強く引かれて体勢を崩しそうになりながら、彼女の後に続いた。

* * * * * *

夜食を取りに行くことと無く、直接自室に向かう。
正直なにも食べたくない。僕の分はぎねさんに食べてくれるように言っておいたので無駄になることはないが、燭台切さんには失礼なことをしていると常々申し訳ない気分になる。とはいえ、食べて残すのもよろしくないだろう。

『―――――――』

無性に息苦しく、胸のあたりがむかつく。要は気持ち悪い。体中が軋んで痛い。まるでインフルエンザで高熱出したときのような・・・。って×はな っ たことないけど。とにかく、いつも以上に体調が悪い。ダメージを受けすぎたからかもしれないが。
それに、今日はたくさん壊したから。

パキィィィン!

『―――っ!』

バキッ

『がッ!』

あまりの動悸に立っていられず、とりあえず座ろうと身を屈めると不意に不愉快な金属音二回、そして頭と腹に激痛。そのまま上半身が布団に倒れ込んだ。喉からドロッとして金属臭い、赤黒い液体を真っ白いシーツの上に吐き散らす。それどころか、生暖かいそれが頬に触れて不快感を伴う。

『―――い、ぃたい』

誰にも受取手がない言葉を発したところで意味は無い。自分の無意味な行動 に思わず笑いが零れるが、結局咽せてまた血を吐いただけだった。痛みに視界と意識が霞む。でも痛みだけは生々しく体にのさばっている。

この痛みも、霞んでしまったら良いのに。

でも、この。これらの痛みは決して鈍ることはない。

鈍ってしまっては、意味が無い。

あぁ。
痛すぎて。いたすぎて。なにも分からない。

ただ・・・。
なんか、かなしくて。





そうして、いつものように意識が途切れた。

* * * * *



[  。随分、意 が持つ  だね。痛い 、 ]

―――主、なに、して、?

[・・・ど した?相棒。僕に  か、用でも・・・って、“これは” だもんな。用、無  って、いつも一緒、にいる]

―――主、赤い、唇、青い

[  。まぁ、気にしない 。これは・・・掃除が、大変 ・・・ね」

―――主

[  ]

―――主、冷たい、大丈夫、?

[・・・君は、  らなくて、いい。僕が  をしたのか、 そうしたのか。 に僕の 、こんなんだけど、   。
・・・だからもっと自由に きるといい。本当の 思い出せるとい ね。僕はもう、 むよ。

――――おやすみ、相棒。 ]

・・・。

――――・・・。



――――――――・・・・・・・・・・?

『・・・。はぁ』

懐かしい、夢を見た。
そのせいで、もう少し前に見たみんなの最期の記憶をあまり覚えていない。無意識のうちに感傷に浸っていたらしい。
襖を少し開けて外を伺う。まだ薄暗いところを見ると早朝―――具体的には4時ちょっと過ぎぐらいのようだ。一つ大きく伸びをしてから、吐血して汚れたシーツを取る。幸い、本体の布団までは汚れてない。
洗いに行くついでに、風呂も入るか。
口元を強く擦ると凝固物がボロボロと落ちる。何度 か強く擦る。この部屋には鏡がないので確認しようがないが、大体落ちたと思われるので風呂場に向かう。

「おや。今日は随分早起きさんだね」
『おはようございます。石切さん
「ああ、おはよう。昨日はよく眠れたのかな?」

風呂場に行く途中、石切さんと鉢合わせた。多分、日課である早朝の祈祷のついでに僕を起しに来てくれたのだろう。本当に生真面目な人だ。

『んー。まぁそれなりですよ。・・・昨日は少し疲れてましたし』
「そうなのかい?君でも疲れることはあるんだね」
『・・・・・・・・・。いや、そうは言っても程度は知れてますけどね』
「まぁ、無理をしたら駄目だよ。何事にも節度は大事だからね。・・・それにし ても、また戦支度を解かずに寝たんだね」
『・・・。血なまぐさくてすいませんねぇ・・・。乾いてるからそんなに臭いしないと思うですが。まぁ、どのみち今からお風呂入りますから念入りに体を洗いますよ』

わざとらしく肩を竦めてみせるが、彼はどうやらそういうことを言いたかったわけではないらしく少し複雑な表情をしている。

「・・・。死臭は死を呼ぶ。死は死を呼ぶ」
『分かってます。分かってますが、仕方ないでしょう?』

だって僕は神様じゃないもの。
僕は僕自身の性質に逆らえない。逆らえば消える。それに僕は絶対に折れない。需要がある限り何度でも僕として目覚める。精神を摩耗しようが、体が欠けていようが、おつむが 畜生であろうが関係ない。

『じゃあ、僕はそろそろ行きますね。日課の時間ずらしちゃってすいません』
「・・・。いやいや。呼び止めたのは私だからね。ゆっくりしておいで」

何か言いたげだったが、僕はそれを無視した。だって何訊かれるかなんとなく想像がつくから。そして、それに答える意味も無いから。

石切さんと別れてすぐ風呂場に辿りつく。

風呂に入りながら、さっきの夢に思いを馳せる。

―――おやすみ。相棒。

・・・もう随分穴だらけの記憶になってしまった。でも、主の最期に×を相棒と呼んでくれたあの声だけは何度も反芻され、再生される。
記憶というものは形あるものじゃないのに、物体よろしく綻びて、風化して、見えなくなっていく。無くなるわけではない、というところがみそ。あくまでも記憶は風化されるもの。時が経つごとに見えなくなるだけ。
ある種、紅茶に砂糖やミルクが均一に溶けるように。そして均一に溶けたそれは、都合の良いように味わわれる。
良い思い出が多かったと思う人間には良い味を。
不幸しかなかったと思う人間には不味さだけを。
何もないと思っている人間には中身の紅茶だけでなく、カップさえ無いように。

知覚される。

そういうのを選択的注意っていうんだっけ?

ともかく、どれが正しいだとか、そんなものは存在しない。

ただ言えることは、あながち悪いことだけではないということ。良いこともそれなりにはあったりすること。確実に両方が存在する。
じゃないと、不幸を嘆くことはできないからね。

幸不幸に気づけるか、受け止めて認められるかは本人次第。才能と言っても差し支えない能力だと僕は思っている。
どうにも、主にはそれが欠如してたみたいだ。まぁ最も、本人が意識的に欠如させたのかもしれないけど。

『ふぅ・・・。よし、寝よう』

一通り作業が終わったのでいつも通り二度寝することにする。

またぎねさんが起しにくるのかな、と思うとなんだか可笑しくて笑ってしまう。

『本当にみんな真面目だ よねぇ』



* * * * *

【設定・補足】

・厚藤四郎
 主人公とよく組まされる刀剣の一つ。気立ての良い兄貴らしく主人公を支えてくれる。

・金属音
 この場合、刀剣が折れる音。出陣したときは必ず部屋に入ったタイミングで独りでに壊れる。本人は身が切り裂かれるような痛みを感じる。

・相棒
 主人公の主が主人公を呼ぶ時こう呼ぶ。本人も気に入ってるよう。

・石切丸
 第二部隊隊員。主人公に頼まれて毎日早朝に彼女を起こしにいっている。いつも主人公の情報を聞き出そうとするが、ことごとく逃げられる。

・×
 一人称

二度寝
 彼女が早く起きる理由は、朝風呂したいから。出陣したときは決まって倒れてそのまま眠ってしまう。シーツを取り替えるためでもある。そしてなにより、二度寝は気持ちが良いから。

<C&P>【銘無しの名無し:日常の断片1/2】


大広間には他の刀剣たちが和気藹々と朝食を摂っている。僕が広間に入ると大体の刀剣は挨拶をしてくれる。理想の家庭っぽい雰囲気。まだここに来て日が浅いとはいえ、そろそろこの空気に慣れないと精神的に持たない。別に疎外されてるわけではないのだが、なんだか居心地の悪さを感じる。
ぎねさんの隣に腰を下ろす。みんなより一足遅く膳に手を合わせ、味噌汁を一口すする。結構熱いもんで少し意識が覚醒する。

「相変わらず、眠たそうだな」

味噌汁の具を咀嚼しながら考え事をしていると、目の前にいるたぬきさんがそんな事を言ってきた。考え事は置いておいてひとまず、会話と食事に興じ ることにする。

『事実、眠たいですし』
「ったく、ガキじゃねぇんだからちゃんと自分で起きるぐらいしろよ」
『僕多分最年少ですからガキですよ』

気の無い返事にやれやれと溜息をつく彼をよそに、おかず、ご飯と頬張る。魚が思っていたよりしょっぱいのでおつゆをそのまま流し込んだ。

「そんなことより、後で手合わせに付き合えよ。どうせ特にすることもねぇしな」
『まぁ良いですけど。なんで僕?他に強いやつわんさか居るじゃないですか』
「卑屈になるなよ。めんどくせぇ」
『面倒なら関わらんでもええんですよ?』

我ながら、自分めんどくせぇ、と思うわけだが仕方ない。これは主の性格だし。口が滑ったとは いえ、不愉快な言葉には違いないので咳払いを一つして話を続ける。

『・・・そもそも今日は“どれ”なのか分からないですし』
「んなのなんでもいい」
『・・・敵の情報は大事ですよ?』
「関係ないね。俺は何であろうとぶった切るだけだ。じゃあ飯食い終わったら道場で待ってっから早く来いよ」

それだけ言うと無言になる。
全く。たぬきさんは危なっかしい。まぁでも、強いから問題ないのかもしれない。罠があっても罠ごと踏み抜いて目標を斬り殺しそうだし。そう考えると恐ろしいが、同時に頼もしくもある。彼の細かいことを気にしない性格が僕が付き合いやすいと感じる理由なのかもしれない。
・・・などと、馴れ馴れしくそんな分析をしてみるが 意味があると思わないので途中で考えるのをやめた。



* * * * * *



部屋に戻る。
審神者さんがわざわざ空き部屋を作ってくれたのだ。僕は別にみんなと同じ部屋でもよかったんだけど、皆さんからしたらよろしくなかったらしい。そんなこんなで、なにに使われていたのかは分からないけど、まだ藺草のにおいが残っているので比較的新しいこの部屋を私室として使わせてくれることになった。この部屋は一人が寝泊まりするにはちょうど良い狭さで、位置の関係で殆ど光は入らないし大間とは離れているので比較的静かだ。要は、安眠に持ってこいな条件が整っている。

部屋の襖を開ける。
襖か ら差し込む光が照らすのは机の上には二振りの短刀。

あぁ、今日は短刀なのか。

短刀であればたぬきさんを楽しませてあげられる。なにせ、僕の一番扱いが得意な武器なんだから。
最近は結構な頻度で長物を扱っていたし。・・・苦手なんだよねぇ。大太刀はともかく、槍とか太刀はどうもうまく扱えない。まだまだ器量が足りないのかも。特訓が必要だ。

短刀を手に取り、鞘から抜いてみる。
怨念のせいなのか何なのか分からない。自分でも不思議なのだが、僕が扱う刀剣はすべて刀身が黒い。刀身だけじゃないが。まるで、影で出来ているように真っ黒。切れ味が宿っているのか怪しいところだが、切れなかったことは今までないので問題ない けれども。

「おい。はいるぞー」

ホルダーに短刀を納めたところで不動さんが部屋に入ってくる。彼は相変わらずだるいオーラとほのかな酒気を纏っている。お使いを頼まれてよほど面倒なのかだるそうな口調を隠すことなく、間髪入れずに用件を話し始める。

「主が呼んでる。今すぐ来いだとよ・・・ヒック」

・・・とのことだった。
これからたぬきさんと楽しい楽しいお手合わせと洒落込むはずだったのになぁ。刀剣同士での呼び出しだったら無視するんだけど、審神者さんとなると呼び出しとなると無視は出来ないし。そうは言っても、気が進まないのは事実なんだよな。

『えぇー。今じゃなきゃ駄目ですか? 』
「そりゃそうだろうよ」

不満を不動さんに漏してみても素っ気ない返事しか帰ってこなかった。どうしようか考えていると、不動さんがさっさと立ち去ろうとしたので、僕は彼の背中に話しかける。

『んー。分かりました。じゃあ不動さん、道場にいるたぬきさんにお手合わせに遅れる旨を伝えてきてください。頼みましたよ』

それだけ言って小走りで彼を追い越しながらもう一度振り返って『・・・頼みましたからね?』と念を押した。離れに向かって全力で走る。
・・・後ろで何か言ってるが、走って逃げているのでうまく聞こえない。聞く気も無い。さしずめ「はぁ?なんで俺がそんなことしなくちゃ・・・おい待て!ヒック」って感じだろう し。

・・・いやまぁ、本当は聞こえてたけど。



* * * * * *

離れに辿りつく頃にはゆっくりと歩いていた。
部屋の前に立つと襖の奥からは声が聞こえる。審神者さんのと、もう一人知らない人間の声。なにを話しているかはくぐもっていて聞こえない。盗み聞く気もないけれど。
少し襖を開けて中に声を掛けてから、次に大きく襖を開く。

『失礼しますよー。・・・審神者さん、僕になにかご用ですか?』

とりあえず、そのまま襖を開けると二人は僕の方を注視する。知らない方の人間は老人だった。しかも顔見知りだった。まぁ、顔見知りとはいえ、×が話すのは初めてなん だけれども。
とにかく、なんとも言えない空気が痛い。
え?なにかいけなかったかな?タイミング悪かったのかな?

「―――君は、やっぱり、**・・・なのか?」

審神者さんは聞きにくそうに僕にそういった。
二つの音を僕はノイズ音で音がぶれて認識できない。これは審神者さんの霊力の関係もある訳だけれど。・・・けれど聞こえなくても分かる。その小さな言葉はある一種の固有名詞。今の僕がとても影響を受けている人間の名前。

―――それが、どうかしたのか。いや、言わんとしていることは分かっているけれども。
けれども、そんな意図なんか汲んでやらない。

『・・・僕には聞こえませんし、分かりませんね』
「おぬしは**じゃあないのか?」
『ですから、それを僕は認識出来ませんし何のことだかさっぱりですね』
「・・・あやつと同じ霊気を感じるな。こんな偶然はあるまいて」

老人は訝しげに僕を見上げる。僕はなにも感じないままに老人を見下ろす。

―――そりゃあ、そうだろうね。霊気が同じというのは、偶然じゃない。むしろ必然だ。
×はあの子に霊気を依存してる。じゃないと、×もあの子も消える。×が消えるのはいいけど、それじゃあこの状況に身を投じている意味が無い。・・・あの子にはとても嫌がられるとは思うが。

「・・・御当主、この子はきっとなにも、知らないんだと思います。・・・自分のことも、分からないんですから 」

意外なことに、いつもの柔らかい雰囲気とは打って変わって強い口調でぴしゃりと言い放った。柄にもなく驚いたもんで、審神者さんのほうに目線を移す。

「とにかく、この子はうちの本丸で預かります。政府がなんと言おうとも。それで良いよね?それとも、ここは嫌?」
『・・・え。あ、そんなことは無いですけど』
「・・・ふん。好きにせい」

僕がなにも言わないうちに話は決まってしまったようで、老人はため息を零すと部屋からいそいそと出て行った。どことなく、部屋に取り残されたような感覚に陥る。
いや、決してそんなことはないのだけれど。

そんな僕をよそにバツが悪そうに審神者さんは微笑む。

「・・・ごめんな?何度も同じ事言わせちゃって」
『別に気にしてませんよ』

分かっていたことだし。

『ところで、僕に用事ってあれだったんですか?』
「まぁ、それもあるんだけど本題は出陣についてなんだ。今日の刀剣は?」
『あー、今日は短剣です』
「そっかそっか。じゃあちょうど良い。ちょっと三条大橋に行って欲しいんだ。・・・誰か一緒に行きたい人とか居る?」
『なんでそんなこと訊くんです?僕は審神者さんの決定であれば異論はありませんよ?』

これは本当。自分で決めるの面倒だし。人選はやっぱりリーダー格である審神者さんが決めるべきそうすべき。
そこに私情云々を挟むべきじゃない。そもそも、仕 事とか義務に私情を絡ませるなんて、かえって辛くなるだけだ。

「そう?本当に?」
『な、なんですか?』
「いや。なんとなくまだ居づらさを感じてるのかなーって思っただけだから」
『そんなことないですよ。この本丸は温かくて安心します』

・・・言ってる自分が一番むなしくなる。
阿呆か。僕は。

「それなら、いいんだ。じゃあ、編成決まったら声かけるから」
『はーい。じゃあ、失礼します』

上手く笑えてたと願いたい。図星を突かれて柄にもなく驚いちゃったし。



―――――・・・。

『・・・叔父さんにも気をつけないと、か。 ×は主、気持ち、知らない。そのまま。だから、せめて正体不明のままで』

言葉として認識をした瞬間、一気に気怠さが襲いかかってきた。そのまま空気に溶けてしまいそう。
その曖昧になっていく心地よさを振り切るために、繰り言のように何度も呟く。

『―――僕は、後悔なんかしない』

絶対に。





* * * * * *

【設定・補足】

同田貫正国
 第二部隊副隊長。御手杵同様、主人公のお世話係。主人公のことは好敵手として認識している。ほぼ毎日、内番じゃなくても手合わせに誘う。

・二 刀流(短刀)
 主人公は短刀を二刀流で扱う。このときの主人公は凶悪。

・不動行光
 第二部隊隊員。主人公にからかって遊ばれてる。たまに、地雷を踏まれて喧嘩になることも。

審神者
 三〇代の男。物腰柔らかな人。初期刀はまんば。主人公の正体に薄々勘づいてるが確証がないため、今は温かく見守っている。

・当主
 じじい。主人公と関係あり。詳細不明。